第33章 危機
ロックがかかってる訳でもないのに、動かない。
どうしようかな。
「何モタモタしてんの?」
「ごめん蛍、なんか今日動かなくて」
「こんなの腰に力入れれば余裕でしょ」
後ろからフワリと腕を回し、カゴを引く。
「動いた…」
後ろから抱きしめられる形になっているが、多分蛍は意識してないんだろうな。
「…いつもより重くない?」
「だよね。
ロックがかかってる訳でもないんだけど、ビクともしなくて」
何か変だよね。
「あ、このボールだけ色違う」
部活で使ってるのとは違う、白いバレーボールが1つ混ざっている。
「それ体育用のボールでしょ」
「うん。
誰か間違えたのかな」
にしては色が違い過ぎるし。
第一昨日はバレー部しか使ってないんじゃ…?
その前に混入したってこと?
でもそれなら誰か気づくよね。
「とりあえず外す…つッ…」
ボールに触れると、右手にピリッとした鋭い痛みが走った。