第28章 力
「部活、辞めるとか言わないよね?」
休憩中、あえて皆の居る前で尋ねる蛍。
「え………うん。
1度やるって決めたことだから…」
「その間は何?」
「気のせいだよ」
こんな幼稚な誤魔化しは蛍には通用しない。
「辞めないで、波瑠ちゃん」
ギュッと手が清水先輩の両手で包まれた。
「は、はい」
せっかく入部したんだから、最後までやり遂げたいとは思っている。
やるからにはね。
「あの、清水先輩」
「どうしたの?」
「明日来る仮入部の人って、もしかして4組の女の子だったりします?」
「うん、そう。知り合い?」
「断じて違います」
そんなこと、1ミリたりとも思われたくない。
「同じクラスなだけです」
「大変だね」
「はい」
「君は散々言われてたからね」
確かにそうだけど。
「好かれるよりはマシかな?蛍くん」
「だからその呼び方止めてって言ってるでしょ」
いつも崩れない蛍の顔が歪む。