第27章 狼
「はいはい。
喧嘩はあとで、澤村先輩が居るところでやってくれる?」
ニッコリと微笑む。
「「…大丈夫デス…」」
なぜか片言の2人。
そんなに澤村先輩が怖いのか。
「飛雄、トス上げて。
日向よりボール半子分低めのダイレクトデリバリーで」
それが私の圧倒的得意なトスだ。
「あ、おう」
ボールを受け取ると、訝しげな顔つきになった。
「ボール落としたいんでしょ?
早くして」
時間になっちゃう。
「…分かった」
「日向、ボール出しだけやってあげて」
その方がやりやすいだろうし。
「あっす。
そんじゃ行くぞ、影山」
「あぁ」
飛雄の瞳が変わる。
試合中を錯覚させるような、凄い集中力。
寸分の狂いもなく打ち上げられたトス。
助走を一切つけることなく、軽くしゃがんでから大きく跳ねた。
そして目の前でボールを捉えると、肩を使って腕を後ろから前へと持って行く。
そしてその腕の勢いを殺すことなく、手首のスナップを用いてボールを打った。