第27章 狼
「これから部活でやるのに、なんでわざわざ今から疲れなきゃいけないのさ」
「確かに。
でもそろそろ時間だから行こ」
「面倒くさい」
「文句言わない。
お嬢様と鉢合わせする前に移動しよ」
「え…?」
「知らないの?
蛍が来る時間帯に合わせてる傾向あるよ。
あわよくば一緒に登下校、とか考えてるかも」
「無理、急ごうよ」
急ぎ足で教室をあとにする。
「何してんの?あのバカ達は」
木によじ登ろうとしている日向。
木の棒を片手にジャンプしている飛雄。
その様子をオロオロして見ている山口くん。
「ボールでも飛ばしたんだと思うよ」
考えられる可能性はそれぐらいだし。
「あっ、月島良いところに‼︎」
「げ、日向」
顔を輝かせる日向とは対照的に、顔をしかめる蛍。
「お願い、ツッキー。
木の上にボール乗っちゃってさ」
パチン、と顔の前で手を合わせる山口くん。