第16章 尊敬
「波瑠はさー、バレー好き?」
好き…か。
「…分からない」
「え?」
「楽しいとは思うけど、好きかは分からない。
分からなくなっちゃったんだ。
好きと得意が違うように、楽しいと好きも違うんだよ」
「うーん…よく分かんないけど」
「日向はバレー好きでしょ」
「もちろんっ」
「バレーしてる時が1番幸せそうだから。
あとバレーの話してる時」
「だって俺バレー大好きだもん」
「好きなことは大事にした方が良いよ。
それを嫌いになるのって…」
声が低くなる。
「死ぬ程辛いから」
冷たい目で日向を見つめる。
「ッ…」
ビク、と日向の肩が震えた。
「そ、れ…って…」
「じゃあご馳走様」
これ以上追求されないよう、言葉を遮る。
「武田先生、練習試合開始は何時ですか?」
「あぁ、8時からですよ」
今が7時30分だから、あと30分か。
「買い出し行って来ます。
練習までには戻るようにしますから」
「はい、お願いします」