第16章 尊敬
「敬語になってますよ、赤葦さん。
歳下相手に」
「尊敬してるから…かな」
「尊敬…赤葦さんがですか?」
「そう」
「その観察眼、見習いたいよ」
「私はトスを学びたいですけどね」
「トスを?」
「完璧とまではいかなくとも、平均点くらい取れるようにしたいです」
「じゃあ観察について教えてくださいよ。
代わりにトス教えるから」
「良いですね、それ」
「そろそろ戻ろうか。
朝食の時間に遅れるよ」
「あ。
それもそうですね、急ぎましょう」
食堂に向かってペースを速める。
会話に夢中で時間を気にする余裕なんてなかった。
「あとで連絡先交換して貰える?」
「今からで良いですよ。
多分忙しくてそれどころじゃなくなるんで」
「そうだね」
立ち止まり、連絡先を交換する。
「ありがとう。
じゃあ行こうか」
「はい」
食堂へ着くと皆揃っていた。
「あかーしビリー‼︎」
「すみません、遅くなりました」
「すみません」
待たせてしまった。
「それじゃ、食うか」
澤村先輩…ここでも仕切るんですね。
席どうしようかな。
お盆を持ったまま考え、手近なところへ声をかける。
「日向、隣良い?」
「うん、良いよ」
「ありがと」
全員で挨拶をしてご飯を食べ始める。