第16章 尊敬
「じゃあ私も付き合いますよ」
「え、良いの?」
「はい。
ちょうど暇してましたし」
「じゃあ行こうか」
並んで走り出す。
「俺、柏木さんのこと見くびってました。
すみません」
「はい?」
「雑誌で見ただけでプレーを見たのは昨日が初めてだったんだけど、正直焦ったよ」
「全然焦ってるようには見えませんでしたけど」
「雑誌に取り上げられるのも才能と容姿だと思ってました。
けど、昨日実際にプレー見てその印象は変わりました。
怖かったです」
いつの間にか敬語になっている赤葦さん。
「怖い…ですか」
「すみません、女性には禁句でしたね」
「いえ、別に」
「実力はもちろん、鋭い観察眼、揺るがない精神力、短いながらも物事を冷静に見つめることの出来る集中力。
どれを取っても怖い才能です」
「そんなに褒めても何も出ませんよ?」
「大丈夫、期待してませんから」
クスッと笑った。