第14章 思いやり
「行くなら犬岡くんが適任だと思いますよ」
「犬岡、行け」
「はいっす」
「よく見てんな。
試合中に色々観察してたんだろ」
「癖なんで」
選手だろうが監督だろうが、バレーに関わる人については観察を怠らない。
「怖えー怖えー」
「冗談言ってる暇あったら手伝ってくださいよ」
「はいはい、何すりゃ良い?」
「とりあえず手足と体幹を暖めます」
まとっていたジャージを脱ぎ、お腹辺りから指先までかかっている状態にする。
「冷やしゃ良いんじゃねぇのか?」
「のぼせは胸から上が熱が高く、手足などの末端は冷えます。
だから…」
「もっ、持って来ましたっ」
「額と首元は冷やし、手足を暖めるのが良いんですよ」
受け取ったタオルを濡らし、畳んで額に置き、もう1つを首元にまとわせる。
「…ん」
ピクリと小さく身じろいだ。
「暖めるってこれで良いのか?」
自分のジャージを私のジャージとわずかに重なるよう、脚までかける黒尾さん。