第51章 Historia-そして物語は完結する。-
たとえ結果は変わらずとも
思うままに選択し
思うままに進む事に意味がある
後悔は無い
何一つ
ゆっくりと目を閉じた、その時…。
──チリン…。
ハッシュヴァルトは閉じた目を再び開ける。
「(今の音は…?)」
チリンッ
今度は近くでハッキリと聞こえた。
「(鈴の…音…)」
優しい鈴の音にハッシュヴァルトは心地良さを覚えた。
「(あぁ…この優しい鈴の音は…)」
懐かしさに目を細めた時…。
「…ユーゴー」
名を呼ばれ、目を見開いて驚いた。
それは その声は
自分が突き放した、彼女の声だと───。
自分が裏切って
泣かせてしまった
彼女の姿が、そこにあった───。
「…何故…此処にいる…?」
問いかけるも、少女は答えない。
「幻覚か…?」
「莫迦じゃないの」
「!」
「あんたに会いに来たのよ」
そう答えた少女は出会った頃のように顔をしかめて、不機嫌そうにハッシュヴァルトを冷たい眼で見下ろしている。
「血みどろになってカッコ悪いわね」
「……………」
「良い気味だわ」
彼女は鼻で笑い飛ばす。
「…それを…云う為に…わざわざ…来たのか…」
「ええそうよ」
「……………」
「あんたはあの男の近くであたし達の死ぬ姿を何食わん顔で傍観してただけの冷徹男ですもの。文句の一つや二つ言ったってバチは当たらないわ」
「…酷い…言われようだ…」
「酷い言われようも何も事実でしょ」
詩調は呆れたように溜息を吐く。
「あんな男に着いて行くから死ぬことになるのよ」
「……………」
「約束を破ってあたしを裏切った挙句に自分を必要としてくれたあの男に力を奪われて死ぬなんて莫迦みたい」
「…陛下の役に…立てたのだ…私はそれを…誇りに思っている…」
「その“誇り”の為にあんたは友達を殺したのよ」
「!」
「ねぇ…本当はバズビーと戦いたくなかったのよね?殺したく…なかったのよね…?」
悲しげに揺れた瞳を見て、詩調は肩を竦める。
「莫迦ね…あんな男の為にあんたは友達を失ったのよ」
「……………」
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