第49章 Divortium-君のための嘘-
今度は“友”としてではなく“敵”として
命の奪い合いをすることになる
俺には何となくわかっていた
詩調が死神になることも
俺とお前が滅却師になることも
避けられない運命だったんだと思う
そして俺がいくら私闘をしかけても
お前がそれに応じることはなかった
お前は俺の挑発を躱し続けた
何度も 何度も
どんだけ俺が咬みついても
絶対に俺と戦おうとはしなかった
ふざけんな
俺と勝負しろ
俺はまだ
お前に敗けちゃいねえ
まだ
「バーニング・フル・フィンガーズ!!!」
5本の指先から螺旋状に渦巻く巨大な炎を放つ。だがハッシュヴァルトには届かなかった。斬られたバズビーは血を噴き出す。
そしてその足でハッシュヴァルトに歩み寄り白装束を掴む。
「…俺の敗けだ、ユーゴー。
…くそっ…思い通りにゃいかねえもんだな…」
ポタリと血が地面を汚す。
「…お前に敗けたら…もっと悔しいもんだと思ってたぜ」
“ユーゴー”
“お前今日から俺の子分な”
“最強の滅却師になろうぜ”
“ユーゴー”
地面に倒れ、ピクリとも動かなくなったバズビー。そこにハッシュヴァルトの姿は無い。
ザリ…ッ
足音が聞こえた。
その足音はバズビーの前で止む。
「…………」
死覇装を着た少女は少しの沈黙を許し、ゆっくりと口を開いた。
「…馬鹿ね」
その声は悲しそうに絞り出される。
「あんた達が戦ったら…どっちかが死ぬことになるに決まってるじゃないの」
既に息を引き取ったバズビーには何も聞こえない。
少女は悲しそうに笑う。
「最初から決まっていたのよ。これがあんた達の運命。これがあんた達が辿る未来だったのよ…」
震える手をギュッと握り締める。
「ねぇもし…あたし達が死神でも滅却師でもなく…普通の人間だったら…未来は変わってたのかしらね…?」
その問いかけにバズビーは答えることは無い。
「あんたのおかげであの人に出逢えたのよ」
唇の端を上げて柔らかく笑う。
「ありがとう」
それだけを言い残すと少女は光の粒となってその場から消えた。
next…