第49章 Divortium-君のための嘘-
「はっ…本当にどうしたよ千歳。お前らしいがお前らしくねえ。お前はその武器で俺達を壊そうってのか?」
「そうだ」
「テメェもクソみたいなアマちゃんだな」
伏見は歯を噛みしめ、苛立ちを浮かべる。
「その武器でテメェは今まで“何人壊した”!?精神的に破壊して“何人殺した”!?テメェのやってることは人殺しと変わんねえんだよ!!」
「伏見…!」
余りの言い草に反論しようとした少女だが、千歳は手で制して止めさせる。
「確かにあたしの武器『断罪の斧(レクシオン)』は人の悪意を“壊す”効果を持つ。精神的に追いつめて心を破壊する。最悪の場合…本当に人を殺してしまう兵器にもなり得る。だがそれは“救いある破壊”だ」
「随分と都合よく言い換えたな。“救いある破壊”だったら何をしてもいいってのか?」
「悪を抱いたまま生きるのは残酷だろう。だから“破壊することで救われる”んだ」
「へぇ…そりゃあ便利な武器だな」
伏見は鋭い眼光で千歳を睨みつける。
「決めた。もう面倒くせえからお前もまとめてぶっ殺すわ。その武器で俺を壊してみろよ。俺も全力でテメェを殺しに行く」
「話の通じない奴だな。殺し合いは好きじゃないって言ってるのに…」
ピシッ
「!」
気配を察知してバッと空を見上げる。
「ん?どうした?」
千歳が不思議そうに少女を見た。
「(今…まずい気配がしたような…)」
少女の顔色に焦りが表れる。
「空間が…裂ける───」
その直後、空に亀裂が入り、黒腔が裂けると、そこから数体の虚が顔を覗かせた。
「!?」
三人は思わず息を呑んだ。
「何でこの空間に虚が…!?」
「恐らくは…あっちの世界の影響が此処にも及んでるんだろうな」
しかもほとんどが大虚(メノスグランデ)だ。
「ギリアンと…アジューカス」
「何だよあの数…どんだけいやがる」
虚達は黒腔から抜け出すと塔を囲むように並び立つ。三人は互いに背を向け、虚の群れを見上げる。
「(此処ももう保たないか…)」
少女は眉を顰め、顔をしかめた。
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