第4章 書類配りII
【七番隊舎】
「(七番隊か…)」
今の七番隊は知らないんだよな
この隊も冴島側なんだろうか
「まぁどうでもいいけど」
興味なさげに言い、扉を叩く。
「神崎です」
「入れ」
「(お、返事があった。)」
流歌は扉を開ける。
「失礼します」
出迎えたのは、厳つい容貌でサングラスを掛けた男だった。名は射場鉄左衛門。七番隊の副隊長である。
「お前が神崎か?」
「はい」
「よく知ってるけぇ。護廷でも噂になっちゅうからな」
「はぁ……」
方言が分からない!
「狛村隊長に書類を届けに来ました」
「一つ確認させてもらう。
冴島襲ったんはお前か?」
「いいえ。僕は冴島四席を襲ってなどいません。信じるか信じないかはそちらにお任せします」
真っ直ぐな眼を向けると射場の表情が一変して、柔らかくなった。
「それだけ聞ければ十分じゃ。今隊長呼んで来る。そこで待っとけ」
射場が執務室に入ると
すぐに狛村が姿を現した。
「お忙しい中、申し訳ありません」
「構わん」
狛村は人ではなかった。その容貌は可愛いもので犬の顔をしており、耳がぴくぴくと動いている。
「書類に判さえ頂ければすぐに帰りますので」
「…大変だったな」
「え?」
思わぬ言葉に流歌は驚いて狛村を見る。
「貴公の事は元柳斎殿から聞いている。
だからそう身構えずとも良い」
「隊長は信じるんですか?
今初めて会ったばかりの僕を」
「貴公はとても優秀で優しい人柄だと聞いている。そんな奴が冴島を襲ったとは思えん」
「(驚いた…こんな考え方をする人なんだ。七番隊は前隊長から良い人を推薦したな。)」
前隊長の彼も面倒見の良い人だったが
狛村隊長もちゃんと『善』と『悪』を見分けることの出来る人だ
「信じてくれてありがとうございます」
「うむ。神崎、辛くなったらいつでも七番隊に来ると良い。此処はお主の敵などおらん。そしてたまに儂の話を聞きに来てくれ」
「はい」
笑んで返事をすると狛村も穏やかな笑みを浮かべて笑った。
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