第45章 Neglecti-気づかないふり-
「そこの小さいの」
「それはあたしのことか?」
「君は自分の身長が小さい事を自覚し給えヨ」
「ぶっ殺すぞ」
苛立ちを浮かべた表情で涅を睨む。
「邪魔だヨ」
「!」
「死神でも無い癖に出しゃばるんじゃないヨ。君の役目は伏見蓮杜の目を覚まさせる事じゃなかったのかネ。此処に君の仕事は無い。何処へなりとも行き給え、ずっと其処に居られると目障りだヨ」
決して目を合わせず涅は千歳を追い払う。
「…ハッ、言われなくても最初からそのつもりだ」
千歳は鼻で笑い飛ばす。
「お前と共闘して勝利を分かち合うのは死んでも御免だな。あたしはお前達が敗北しようがどうでもいいんだ。死ぬなら勝手に死ねばいい。だが精々、死神らしく護廷の為に役に立ってから死ねよ。それじゃないと浮かばれないだろうからな、前総隊長殿は」
「余計なお世話だヨ」
「それともう一つ…」
涅は横目で千歳を見る。
「試したい薬があるなら早めに投与することだ」
「!!」
涅が顔色を変えたのを見てニヤリと笑った千歳は手にしていた斧を消すとその場から立ち去ろうと背を向ける。
「逃すわけないじゃん!バンビちゃん!」
ゾンビ化したバンビが攻撃を放つ。幾つもの球体が千歳に向かうが…彼女を守るように魔法陣が出現し、球体が触れると弾き返した。
「返すぞ」
跳ね返った球体はバンビに直撃した。ジジが驚いて目を見開き、千歳は平然とした顔で此方を振り返る。
「知らないのか。夕凪家は防御力に長けた家系だ。そんな攻撃、あたしの魔法陣で防げるに決まってるだろ」
「へェー妙な技使うんだね」
「“あたし達”をナメるな」
それは三大貴族を甘く見るな、と言っているようにも聞こえる。姿を消した千歳を涅は訝しげに見つめる。
「…本当に小娘そっくりだネ。
こんなにも腹立たしいとは…」
思い出すのは…やはり梨央の顔だった。
涅は嫌悪の眼差しを宿す。
「ちぇ…あの子とも遊びたかったのになー。残念だなー。あの子をゾンビ化したら使えると思ったのに…。本当に残念。けど…多分あの子には何も効かないだろうなァ」
ジジは何かを悟った様な表情を浮かべ、涅に視線を戻した…。
next…