第45章 Neglecti-気づかないふり-
ずっと 考えないようにしてた
あの時
初めて あいつと 対峙した時
あそこに 呼び寄せられたような気がしたんだ
それが何故だったのか
ずっと考えないようにしてた
何の情報も無い中で
どうしてまっすぐ
あいつの所へ行ったのか
どうして
あいつを一番重要な“敵”だと思ったのか
そして
初めてあいつを 見た時
“誰か”を思い出しそうになった事も
「斬月!!!」
激しく落ちる雨が二人を濡らす。
「…どういう事だよ…斬月…」
「…聞いた通りだ。
…そして私は“斬月”では無い」
崩壊した建物と共に二人も水の底に落ちる。
「ユーハバッハなのかよ…本当に…本当にあんた…斬月じゃねえのかよ…」
「私はお前の中の滅却師の力の根源。
ユーハバッハでありユーハバッハではないもの」
「わかんねえよ!!」
一護は叫ぶ。
「敵なのか!?味方なのか!?今までのあんたの言葉は嘘だったのか!?どっちなんだよ!!!」
「…敵ではない。味方でもない。だが言葉にも心にも嘘は無い。───お前に名乗った名以外は」
自らを“滅却師の力の根源”と称した男は静かに語り始める。
「…一護、お前は今まで見てきた筈だ。私がお前に斬魄刀の扱い方を教える時、いつも虚の力を借りていた事を。お前が斬魄刀の力を使い切れなかった時、お前が本当の命の危機に瀕した時、お前の命を救ったのが私ではなく虚だったという事を」
目を見開かせて驚愕する一護。
「私はお前を死神にさせたくはなかった。だから私は育ち切らぬお前本来の力を抑え込み、自らがお前の力の中心に居座った」
「……………、…どうして…」
「“どうして”?お前を危険から、戦いから遠ざけたいと願うことのどこに疑問がある?」
一護は愕然とした表情で斬月を見ている。
「お前が死神になってしまえば否応なしに戦いに巻き込まれる。お前は傷つくだろう。お前は苦しむだろう。そしていずれ必ず、私自身の手でお前を殺さねばならなくなるだろう」
その言葉に衝撃を受ける。
辛そうに顔を歪めて掌を強く握った。
「斬月…教えてくれ」
一護は深妙な面持ちで斬月を見据える。
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