第41章 Equiti-見えざる帝国-
「光を失えば…」
雅は前髪で隠れた左眼に触れる。
「たとえ共に戦えなくても私達の心は一つだ」
「梨央…」
「今回の戦は今まで以上に厳しくなる。辺りは血の海が広がり、多くの犠牲者を出すだろう」
それを聞き、雅は辛そうな顔をする。
「敵は滅却師、一筋縄ではいかないことは確かだ。奴らも本気で私達を殺しに来るだろうからな。卍解さえ奪われなければ優位に立てる。だが奴らも莫迦じゃない。必ず卍解を奪う為に何かしらの策を練ってくるはずだ」
「本当に可能なのかしら…」
「今更どうこうしたって仕方ねえだろ。卍解を奪われなきゃいいだけの話だ」
「蒼ちゃんテキトー」
「何が適当だ。最終的には最後まで諦めなかった奴が勝利するだろ。卍解を奪われたからってコノコノやられちまう隊長達じゃねえよ」
「そうだね」
梨央は蒼生から雅に視線を移す。
「キミの守りたいものは何?」
「僕の…守りたいもの?」
「キミが失いたくないものは何?」
「………………」
「雅、キミの気持ちは痛いほど解る。でも戦わなければ何も守れない。誰も救えない。私達は自分の守るべきものの為に刀を振るんだ」
「うん」
「目の前に立ち阻む敵は全滅させろ。斬る事を迷うな。その一瞬の判断が敵の攻撃を許す。だから…後悔のない戦いで敵を倒せ!」
「(僕は…僕の、守りたいものは…)」
「大丈夫だよ、みっくん」
にんまりと笑った霙が雅の腰に抱き着く。
「もしみっくんが危ない時は霙達が守ってあげる!」
「!」
「みっくんを傷付ける奴がいたら霙達がやっつけてあげる!だから何も不安がることないんだよ!」
「鬼灯さん…」
「でもね…もし霙達が危なくなったら…その時はみっくんが助けに来て、霙達を守ってね」
優しい顔で霙は笑った。
「キミ達が安心して帰れる場所を私は守る。キミ達の居場所は私が奪わせない。だから雅、戦う覚悟を決めてくれ」
迷っていた雅だが小さく頷いた。
「分かった。戦う覚悟を決める」
“ありがとう”とお礼を言う。
「さあ諸君、賊軍共を手厚く迎え入れてやろうじゃないか」
梨央は不敵にほくそ笑んだ。
next…