第40章 Periculo-性格の不一致-
「人を戦闘狂みたいに言いやがって…」
「おや、気付いていなかったのかネ?」
挑発する涅にゆっくりと顔を上げる。
「君は昔から戦いにハマり過ぎると戦いそのものを愉しむ傾向があるじゃないか」
「それを言うなら隊長こそ死体を解剖して研究するのが好きな傾向があるじゃないですか。イかれ科学者が。」
「相変わらず威勢だけは一人前だヨ」
「どーも」
ふん、と顔を逸らす。
「ところで君に聞きたい事がある」
涅は少し声を弾ませて言う。
「君はいつ死んでくれるのかネ───?」
その質問に梨央は冷たい目を宿す。
「涅!?」
「何言ってるんスか!」
「何って…ごく普通の質問だヨ」
周囲が騒つく中、二人は互いに目を逸らさず見合う。
「早く答えてくれ給え。“君はいつ死ぬ”?」
「まだ死ぬ予定はありません」
「なるべく早くしてもらえると助かるんだがネ」
「何で隊長の為に死ななきゃならないんです」
「君を解剖したいからに決まってるじゃないか」
「死んでも御免です」
「やれやれ…死にたがりが死ぬのを拒否るとは。これは失敗作だネ。昔の君なら喜んですぐに死んでくれたろうに」
「(キミの為に喜んで死ねるか!!)」
「それとも…役立たずのモルモットは誰かが死ぬのを見ないと死んではくれないのかネ?」
「っ………!!」
“その誰か”に思わず仲間の顔が浮かんだ。
カッとなって刀を掴み引き抜こうとすれば…
「そこまで!!!」
「「!!」」
浮竹の制止する声が響いた。
二人が視線を向けると浮竹は厳しい表情を浮かべている。
「涅、今のはお前が悪い。
あまり梨央を苛めてやるな」
「……………」
「梨央もその手を放すんだ。
こんな場所で刀を抜くんじゃない」
「…すみません」
冷静になった梨央は刀から手を放す。
「残念だったネ、私を殺せなくて」
「そのうち殺すんで大丈夫です」
「逆に君が伏見蓮杜に殺されない事を祈るよ」
「あんな奴に殺される程、弱くないんで」
「負け犬の遠吠えかネ?」
「どっちが負け犬なのかすぐに判りますよ」
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