第40章 Periculo-性格の不一致-
冴島桃香が何者かに殺害された────。
「冴島が…死んだ?」
「犯人は?」
「未だ行方知れず」
隊首会で山本からそれが伝えられ、驚きを隠せぬ者もいた。
「だが目星はついておる」
「誰なんです?」
「…ここからは先はおぬしの口から話した方が良いじゃろう」
山本の視線がスッと梨央に向けられる。
「あまり…あの男の話はしたくないんですが…」
溜息を吐いて嫌悪の眼差しを宿す。
「二人を殺害したのは恐らく…伏見蓮杜という男です」
「伏見…蓮杜?」
「伏見家当主にして私と匹敵する力を持ちます」
「お前と!?」
「きっと冴島悠人は伏見と協力して脱獄を考えていたんでしょう。でも伏見には最初から協力するつもりなど無かった。冴島悠人がどういう経緯で伏見と関わったのかは知りませんが…伏見は弱い生き物が大嫌いです」
険しい表情を浮かべたまま、話を続ける。
「自分の強さに絶対的な自信を持っている、だからこそ伏見は弱い奴が生きていると殺したい衝動に駆られるんです。自分が最強だ。この世界で一番強いのは他でもない自分だと。そういう確信があるからこそ…“弱いくせに強いと勘違いしている冴島兄弟を殺した”」
「そんな…」
「弱いから殺されて当たり前。弱い奴が世界に残っていても役に立つ可能性はゼロに等しい。だから殺すしか無かった。それが伏見の殺す理由なんです」
「人って…そんな簡単に殺せるものなの?」
「奴の場合はそうでしょうね。あれには昔から人を殺すことに何の迷いも無い。その上…血の気が多くてすぐに人を斬りたがる。だから厄介なんです…敵に回すのは」
「たしかお前も貴族だったな」
「うん」
「しかもあの最高位に値する三大貴族なんだろ」
「あーうん…別に隠してたわけじゃないよ」
恋次の言葉に曖昧に笑う。
「あれでも幼馴染みなんです…一応」
「心底嫌そうな顔だな」
「まぁね」
「お前がそんなに警戒してるってことは…相当強いのか?」
「はい」
浮竹の質問に頷いて答えた。
「私達三大家は霊王に仕える家系なんです。けど今となって伏見家は裏切り者の烙印を押されてます」
「裏切り者の烙印?」
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