第39章 Spero-託された希望-
銀城と一護が空で対峙してる中、梨央は雨竜と物陰に隠れて銀城を倒す方法を考えていた。
「さて…どうしようか」
「奴の攻撃自体に黒崎の霊圧が融合されてるんだ」
「厄介だよね」
「仁科さんの力で銀城を倒せないのかい?」
「倒せるよ」
「なら───」
「でもダメ」
「どうしてだい?」
「私が銀城を倒すことはルール違反だから」
「ルール違反?」
「これは彼の戦いだ」
梨央は空を見上げる。
「仮に私が銀城を倒したとしてもあの男は簡単に死んではくれない。何故だかわかる?」
その質問に雨竜は軽く首を振る。
「運命が二人の戦いを望んでいるからさ」
「運命…?」
「運命は人々に様々な因果を与える。その運命を正しく歩む為に“物語”というものが存在する。つまり…彼が歩む運命の中に“銀城と戦う物語”があった。だから今、彼は生まれ持った運命を歩み、銀城と戦っている」
運命ってのは
本当に残酷だな
「私が彼に代わって銀城を倒せば…正しく歩んでいた彼の運命は捻じ曲がり、やがて狂い始めるだろう。そうならない為にも第三者が邪魔したらダメなんだ。これは彼の運命だから…彼自身の手で物語を終わらせないと。そしてまた…新たな運命が物語に加わる」
難しい話に雨竜は困った様な表情を浮かべている。解らなくていいんだよ、と梨央は笑った。
「ねぇ、雨竜くん…」
「何?」
「…いつかキミ達が…」
「?」
「やっぱ何でもない」
切ない顔を浮かべた後、小さく笑う。
「よォ、名案は出たか?」
「何だそれは」
「何だよ、オメーが少し様子見ろって言ったんだろ。サクッと倒すアイデア考えてんじゃねえのかよ」
「バカか君は。そんなものある訳がないだろう」
「なんだ無えのかよ」
「僕は今、奴の霊圧を観察してたんだ。
よく聞け、奴の霊圧には君の───」
「じゃあ俺、行ってくるわ」
「!待て黒崎!!」
「んじゃ私も行こうかね」
「仁科さん!?」
「雨竜くん、考えても何も始まらないよ」
「そうだけど…」
「名案が無ければ先手を打つべし!…だよ☆」
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