第37章 Sors-定められた運命-
死神化してから現地に向かう途中、暗雲から降り注いだ雨が地面に落ち、やがて大粒な雫へと変わり始めた。
「…まるでキミが泣いているみたいだね」
耳に届いたのは悲痛に泣き叫ぶ友の声───。
その悲しい泣き声は地面を打ち付ける程の大きな雨音でもハッキリと聞こえていた。
「そうか…全てを知ったんだね」
目を瞑れば嫌でも耳に残る叫び声。
瞬歩で移動するとそこには本性を表した銀城と涼しい顔で佇む月島、そして…全てを知って深く絶望した一護の姿があった。
「雨が…」
一護の泣き叫ぶ声を聞きながら悲しい顔で空を見上げる。
雨が止まない
彼が泣いているからだろうか
ああ 嫌だな
友達の悲しい顔は
見たくないのに…
「!」
すると一護の背後に死覇装を着た少女が刀を持って現れた。
少女は微笑み、梨央に目で“来い”と訴えている。
「(ほらね、奇跡は起こるでしょう───。)」
唇の端を上げて笑い、少女の元に駆け寄る。
少女と共に刀を握り、お互いに顔を見合わせて微笑んだ。
二人で握った刀を絶望に打ちひしがれている一護の背中に突き刺した。
ドッ
「──────」
振り返る一護の視線の先には一心と浦原が立っている。
「…親父…浦原さん…」
胸から突き出ている刀をペタペタと触り、悲しい顔で二人を見た。
「…そうか…そうかよ…。
親父たちまで…そうなのかよ…」
目からは雨なのか涙なのか、区別のつかない雫が流れている。
「…馬鹿野郎、“俺じゃねえよ”。よく見ろ、“もう見えてる筈だ”。その刀を握ってんのが誰なのか───」
一護の両の眼には死神化した梨央とルキアの姿がハッキリと見えていた。
「────……ルキア。」
そう、ハッキリと──────。
「梨央────……」
その瞬間、突き刺した刀が夥しい光を放ち、一護を巻き込んで竜巻のような渦が起こった。
立ち去ろうとした銀城と月島は振り返る。
そこに現れたのは
死神の力を取り戻した
一護の姿だった─────。
「…そんな…バカな…」
死神の力を取り戻した一護に銀城は驚きを隠せずにいる。
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