第30章 ミガワリ ト レイコク
「蹴られたぐらいで気絶とは弱過ぎる。
キミと遊んでもつまらないな」
汚れた死覇装の埃を払う。
さっきまでの殺伐とした悍ましい空気は無くなり、狂気で歪む冷たい雰囲気も消え、いつもの口調に戻った梨央がいた。
だが…再び冷たい眼を向け、ジッとワンダーワイスを見つめると片足で触手を踏みつけた。
「オゴロア!!!」
「起きろ」
地面に落ちた刀を拾い上げ、ワンダーワイスの首に刀を当てる。
「…どうせなら痛みも削り奪ってしまえば良かったのに」
ザシュッ
パパッと返り血が飛ぶ。
「チッ…汚い」
親指で顔に飛んだ血を拭う。
「!」
ワンダーワイスを見ると切り離された頭がどんどん膨張し、熱を帯びていた。
「な……っ」
「梨央!!」
咄嗟に両腕で顔を覆う。
遠くで山本の焦った声がしたその直後に大爆発が起こった。空座町のレプリカは爆風に耐えられず、崩壊した。
やがて爆炎も風圧も止むと藍染の目の前に巨大な大穴が出来ていて、そこには火傷を負った重傷の山本と意識を失い、不思議な結界で身を守られた梨央が倒れていた。
「はっ…はっ…はっ…」
「…あれ程の爆炎をこれだけの被害に抑えるとは流石は護廷十三隊総隊長だ。君がその身で抑え込んでいなければ君の炎は君達の張った脆弱な結界など消し飛ばし今迄この小さな町の何倍もの大地が灰になっていただろう。感謝するよ山本元柳斎。君のお陰で“私の世界”は護られた」
そして梨央を見る。
「この爆炎でも死なないとは本当にキミは悪運が強い。その結界が無ければ今迄彼女の体は跡形も無く消し飛んでいた」
「…お…おの…れ…」
意識を失った山本に近付く。
「君には“殺しはしまい”などと言うまい。尸魂界の歴史そのものである君だけはせめて私の剣で止めを刺そう。それから君だ仁科梨央。今度こそ深い闇の底に落とす為の鎖を繋げよう」
ガッ
「!」
「…何度も言わせるなよ小童、甘いわ。
破道の九十一“一刀火葬”」
灼熱の炎に呑まれた藍染は自力で抜け出す。
「…く…」
藍染が上を見ると虚化した一護が刀を振り上げ突っ込んで来た。
next…