第30章 ミガワリ ト レイコク
「…ぐ…」
胸から突き出ている刃を手で握りしめる藍染の表情が苦痛に歪む。
「…く…そ…ッ」
スルッと刃から手が滑り落ちた。
その瞬間、全員が確信する。
藍染を倒した────と。
「や…やった…」
「やりよった…!!
ついに隊長達が…やってくれたで…!!」
歓喜に満ちる声が起きる。
「おう吉良!!お前ももっと喜ばんかい!
いつも通りの辛気臭いカオしくさって!!」
「え…ええ…」
すると負傷していた雛森が起き上がる。
「おぅッ!?何じゃもう起きてええんか雛森!?」
「雛森くん…!」
心配する二人が声をかけても無反応な雛森。
スッと立ち上がると一人で歩き出してしまう。
「お…おい、どこ行くんじゃ雛森っ!?」
吉良と射場は互いに顔を見合わせる。
「雛森くん!!」
「雛森ィ!!」
慌てて雛森の後を追う。
「…やれやれ、ようやく折り返しってトコやな…」
平子は肩に刀を乗せて安堵の表情を浮かべ…
「…のォ、市丸」
遠くにいる市丸を見据える。
「…みんな…みんな…!!」
目を見開き、驚いた表情を浮かべる一護。
「みんな一体何をしてんだよッ!?」
一護の怒気を含んだ苛烈な叫び声に鏡花水月の能力から解放された一同がハッと我に返り、藍染を見る。
「ぐ………っ」
そこには口から血を流し
苦しさと痛みで顔を歪める
梨央がいた───。
「…り…」
「…仁科…!?」
その場に衝撃が走る。
雛森が刺される前に零道で入れ替わり、自らの命を犠牲にした梨央は血濡れた手で刃を握る。
「っ………」
胸を貫かれ、小刻みに呼吸を繰り返す。
「か…は…っ」
激痛が伴い、呻き声を漏らした。
全員が目を見開いて絶句し、言葉を失う。
「くそがっ!!!」
振り返る平子の視線の先には雛森を追いかける吉良と射場の姿。
二人は異変に気付いて後ろを振り返る。
その瞬間、二人の背中から真っ赤な血が飛沫を上げ、同時に倒れ込む。
斬ったのは雛森───と錯覚していた藍染だった。
.