第3章 書類配りI
「書類を各隊の隊長本人に渡して欲しいんじゃが…行けるかの?」
「なに遠慮してるんですか。
そんなの全然ヨユーで行けます」
「お主に何かあれば…」
「仲間に申し訳ないですか」
「今度こそお主の兄に殺されるからな」
「大丈夫ですよ。兄はあれでも総隊長を気にかけています。ただ素直じゃないだけです」
「では宜しく頼むぞ」
「もちろんです。売られた喧嘩は喜んで買いますよ。存分に地獄を体験して来ようじゃないですか」
ニヤリと愉しげに笑い
書類を抱えて二番隊へと向かった。
◇◆◇
【二番隊舎】
「失礼します。どなたかいらっしゃいますか?」
外から呼び掛けるも、何の応答もない。
あからさまな無視だな
分かってたけどやることが幼稚なんだよ
「…さっさと出てこいよ」
思わず本音が口から飛び出る。
「(仕方ない…)」
誰も開けてくれない為、扉に手を掛け、勝手に入ることにした。
「失礼しま───」
足を踏み入れた瞬間…
バシャッ!
「っ……!?」
目の前に大量の水が飛んできた。
書類を持っている為、片手で顔をガードしたが、庇いきれなかった死覇装と髪がずぶ濡れだ。
「…………」
瞬時に反応したものの、ポタポタと水滴が地面に落ち、流歌は静かな怒りを覚えた。
「チッ。何でガードすんだよ」
「そのまま顔も濡れりゃ完璧だったのに」
「ホント空気の読めない奴ね」
「つーか勝手に入って来んじゃねーよ」
次々に飛び交う罵倒と冷たい視線。
「(許すまじ。)」
だがそんなことよりも自分をこんな目に遭わせた奴をガードした腕の下から睨み付ける。
「(こいつが水かけやがったな…)」
ぶつけようのない怒りを必死に抑え込む。ここでキレてしまえば全て水の泡だ。それこそ桃香に罪を償わせられなくなる。流歌はグッと堪えた。
「…失礼ですが砕蜂隊長はいますか」
「あァ?隊長に何の用だテメェ」
「書類を届けに来ました」
「何で強姦魔を隊長に会わせなきゃならねぇんだよ」
「さっさと桃香ちゃんに謝れよ!」
「証拠はありますか?」
「証拠だァ?何のだよ?」
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