第28章 ザンゾウ ト カタワレ

「…え…？」



「…黒…崎…？」



「──馬鹿な、生きている筈が無い。
その姿は何だ、お前は誰だ」



“それ”が掌を開けば、吹き飛ばされた刀が引き戻される。



掌に収まった刀を一振りすると地面が捲れ上がり、凄まじい突風が巻き起こって梨央達の体は勢いよく吹き飛ぶ。



「あうっ」



「井上さん!!」



「二人とも私の傍に来て!!」



二人を守るように分厚くて強力な結界を張る。



「霊圧の消耗が激しいからどこまで持つかわかんないけどヤバくなったら援護よろしく!!」



それからの戦いは一方的に“それ”が攻撃を仕掛け、手を引き千切られたウルキオラが最後の一撃で倒された。



「倒…した…」



「…くそ…っまさかこの俺が…虚と化した人間などにやられるとはな…滑稽な…話だ…」



ウルキオラの頭を足で踏みつけ、至近距離から虚閃を撃とうとする。



「…成程な、容赦は無しか。虚らしい事だ、構わん。貴様に敗北した俺に最早意味などありはしない、やれ」



虚閃を放った衝撃で辺り一面が爆発した。あまりの強風に堪えられず、顔を腕で覆う。



やがて風が止んだのがわかり腕を退けると…そこにはウルキオラの上半身だけが残っていた。



「黒崎…」



動けないウルキオラを放り投げると歩み寄って刀を頭に突き刺そうとする。



「…もういい…黒崎。もう決着はついた。そいつは敵だが死体まで斬り刻む必要は無い…もういいんだ黒崎…」



“それ”の手を掴み説得させる雨竜だが、掴んだ手は緩まない。尚もウルキオラを仕留めようとする“それ”に雨竜は叫ぶ。



「聞こえないのか黒崎…！止めろと言ってるんだ…！それをしたら本当に…お前は人間じゃなくなる…！」



鋭く光る鋒はウルキオラの喉元まで迫っている。



「黒崎!!!」



「ダメだ!!そこから離れろ!!」



咄嗟に名前を呼ぶが既に遅かった。彼の腹部に“それ”が投げ放った刀が深く突き刺さる。



「石田くん!!!」



「…ケル」



「！！」



「助ケル、俺ガ助ケル」



ああ そうか



彼は織姫ちゃんのために…



「待って黒崎くん!!黒崎くん!!」



再び虚閃を撃とうとする“それ”の背後からウルキオラが槍を持って空中で爆発させた。


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