第27章 ホロウカ ト カイホウ
【虚圏】
「…いいのですか、マユリ様」
「何がだネ?」
「せっかくの被験体(サンプル)が…」
「あの女を解体するのは別の機会にとっておく。それよりも…相変わらず気色悪いヨ、あの得体の知れん小娘は。昔より更に存在が歪んでいて…吐き気がする」
眉を潜めた涅は顔を歪めて言葉を吐き捨てた。
「全く…“アレ”を好く連中の気持ちが判らんネ。モルモットの癖に融通が利かないし大した役にも立たない。早くあの女の死体を解剖したいのにまだ死んでくれない。本当…役に立たんヨ。まァ、この先あの小娘が他人の為に命を犠牲にして死ぬことを願うとしよう」
涅はニヤリと笑った。
◇◆◇
「ルキア!恋次くん!茶渡くん!」
一護の後を追いかけて第五の塔に到着した梨央は大勢の虚を相手に苦戦している三人を見つける。
「みんな無事でよかった…!」
思わず笑みが溢れた。
「お前も無事のようだな!」
「加勢しようか!?」
「俺達だけで充分だっつーの!」
そう答えたのは敵を斬り伏せた恋次だ。
「そのまま一護を追えるか?」
「もちろん」
「必ず井上を連れ戻せ」
「そのつもりだよ!」
その場を三人に任せて梨央は第五の塔に入る。
すると刀同士のぶつかり合う激しい音が響いた。
まさに激戦だった───。
「ウルキオラ…」
梨央の霊圧に気付いた二人が互いに間合いをとって距離を作る。
「やあ、いっちー」
ニコッと笑って一護を見た。
「随分お疲れのようだがもう限界かい?
なんなら私が代わってやろうか?」
「…はっ、いらねえよ」
「そうか」
飄々と語る梨央に一護は笑って返事を返す。
「遅かったな」
「これでも急いでキミの後を追ったんだよ」
「その割には息すら乱れてねえぞ」
「あはは」
「仁科梨央か」
名前を呼ばれた梨央はスッと笑顔を消してウルキオラを見る。青と翡翠の瞳が静かにぶつかり合う。
「そんなに警戒しないでよ。この戦いに参加する気はない。だから…存分に殺り合えよ」
「……………」
「そのほうが楽しそうだろ?」
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