第27章 ホロウカ ト カイホウ
気付くと藍染は見知らぬ場所に佇んでいた。
「……………」
取り乱す事なく冷静に、自分のいる場所を把握する為、周囲を見回す。
「(…何処だここは?)」
空は青々しく澄み渡り、木々達が柔らかな風の音で踊るように揺れる。
「(夢…ではないようだ。)」
藍染は己の掌を見た。
「(実体はあるが…妙な感じだ。まるで…“意識だけが存在している感覚”。)」
背後を振り返ると、小道を抜けた森の先に大きな屋敷が見えた。
そして──……
前を向き直ると目の前には塔が聳え立っている。藍染はジッと塔を見上げ、ゆっくりと歩き出した。
「(不思議な感じだ。)」
フッと小さく笑みを溢し、灰色に染められた塔を登り始める。
中は明かりは灯っておらず、陽の光だけで照らされた階段を螺旋状に登り、その途中で四角い小窓があり、覗くと先程の屋敷が少し遠くに見えた。
「(あの屋敷は何だ?)」
一つの疑問が浮かぶ。だが藍染は気に留める事なく、階段を登り続ける。
しばらくして光が差し込み、出口であることがわかる。藍染は涼しげな表情を残したまま、警戒心を張り巡らせた。
そして、階段を最後まで登り切ると…。
「っ───」
その光景に目を見開き、言葉を失う。
そこは、美しい庭園だった。
色とりどりの花々が花壇に植えられ、木の椅子と白い机が置かれてある。
「!」
サファイアの宝石が埋め込まれた指輪が机に置かれているのに気付き、歩み寄る。
「………………」
透明感のある深い青と不思議なオーラを放っていた。
藍染は思った。
「(青、か…。)」
その言葉で浮かんだ人物は誰か。
彼はゆっくりと指輪に手を伸ばし、触れようとした。
「触るな──!!」
「!?」
突然の怒鳴り声に思わず体をビクつかせる。振り返ると、そこには怖い顔をして怒り、鋭い眼光でこちらを睨みつける少女がいた。
「それに気安く触れるな」
「君は──……」
藍染は目を見開く。
「ここから出て行け──!!」
少女が叫んだ瞬間、藍染の意識は遠退いた。
「(なん、だ…)」
彼が最後に見たのは、美しい『あお』だった…。
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