第23章 タタカイ ト ブキミナコエ
「ふはははははは」
ドンッ
「一護…一護を助けねえと…」
「待てネル!」
「このままじゃ一護が死んじゃうっスよ…!!」
「!!」
ネルの悲痛な声を聞いた瞬間、梨央の脳裏に過去の記憶が甦る。
『すまない…』
『守って…やれな…くて…』
『私はお前達を──……』
目を見張ったまま、固まってしまった梨央を不思議そうな顔で見上げるネル。
「どうしたっスか…?」
「…いや、何でもない」
刀を持った手で前髪をぐしゃりと掴む。その顔は苦しげに歪んでいて、どこか辛そうだった。
「(今は“余計な事”を思い出すな。)」
表情を引き締め、顔を上げて前を向く。
「…月牙」
「!」
「天衝」
「…ほう」
斬撃を飛ばす。それを目隠しに使い、瞬歩でドルドーニの背後に現れた一護は刀を振り下ろす。しかし今度は腕で受け止められてしまう。
「月牙!!」
「舐めるなと言った筈だ坊や!!!」
「くそ…ッ」
「…聞き分けの悪い子には…お仕置きだよ」
ドルドーニは両手で妙な形を取った。
「あれは…!」
「っ、」
「あ、ネル!!」
脇からすり抜けて一護を助けに駆け出したネル。
「チッ!」
その後を追おうとしたが…。
“何を躊躇ってる”
“あんな雑魚、早く殺しちゃえよ”
「!!」
“お前なら瞬殺だろう”
“なのに何であの男に任せてるんだ”
“とっとと終わらせちゃえよ”
「…五月蠅いな」
楽しげに嗤う悪魔の聲
その聲が耳障りで仕方ない
「出てくるな、引っ込んでろ」
“冷たくあしらうなよ”
“それにお前は私を大事に扱え”
“今はお前と共有している仲なんだからな”
「………………」
“お前の大事なものを守る為に強くなれ”
“目の前に立ち阻む障害は全て殺せ”
“『望み』の為に──!!”
「私を支配できると思うな。キミは私がいなければ何も出来ない。図に乗るなよ」
“…お前の為に言ってるんだがな”
「余計なお世話だよ…!!」
頭の中で響く聲の主を振り払い、ネルの元へと走り出した。
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