第22章 サンケタ ト ハクダツ
「いっちー後でシバく!!」
ぷんすこと怒りながらザクザクと砂地を踏む。
彼女は何故か今、仲間と逸れ、一人だけ別の場所に“落とされた”。
「彼を先頭で行かせるんじゃなかった!!霊子で作った足場がボロボロなせいで崩れ落ちちゃったじゃん!!乱気流に呑まれて吐き出された先が此処だよ!!」
この場にいない一護への怒りが収まらず、ダンダン!!っと地面を踏み鳴らす。
「…ったく」
しばらくして落ち着きを取り戻し、空を仰ぐ。
現世と尸魂界の狭間にある空間。それが虚圏。
砂漠のような一帯に、一際目立つ月の輝き。
「此処は淋しい世界だな…」
虚は普段ここに潜んでおり、その間は例え死神であっても、その動向を把握することはできない。
現世や尸魂界に比べて大気中の霊子濃度がかなり高い為、小さな虚なら呼吸をするだけで充分な栄養を得られる上、死神や虚、滅却師などもこの空間では大幅に力が上昇する。
「さて、彼らを探すか」
意識を集中させ、霊圧知覚で一護達の霊圧を探り、居場所を特定する。
「見つけた」
視線の先には遠くに聳え立つ宮殿。そこから三人の霊圧を感知した。その場所を目指して駆け出す。
「!…誰だ?」
宮殿の近くまで辿り着けば、一護達の姿が見える。しかし何故か、敵と思わしき相手と楽しそうにしている。
「随分楽しそうだな。私も混ぜてくれ」
「梨央!?」
「仁科さん!!」
一護と雨竜はそれぞれ違った意味の驚き顔を浮かべる。手を短く挙げ、雨竜に話しかけた。
「やっほー雨竜くん☆」
手を下ろし、“そして…”と言葉を付け足し、一護に視線を移す。
「やあ…いっちー」
ニコォ…っと黒い笑みを向けると、その怖い笑みに一護は反射的に肩をビクリと跳ねさせた。
「よ…よお!無事だったんだな!」
「無事だったよぉ。誰かさんが足場を支えてくれなかったから落ちちゃったけど何とか無事だったよぉ」
「いやあれはオマエが…」
「ん〜?」
「っ!あれは俺が悪かったです!!」
「ほほぅ…?」
「まさかオマエが落ちるなんて思わなかったんだよ」
「…へえぇ」
顔を引きつらせながら必死に弁解する一護。
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