第19章 キケン ト オアソビ
「…随分と派手にやってくれたものだ」
目の前の戦況に唖然とする。瞠目した表情で視線を一点に向ければ、深手を負って倒れている織姫と茶渡。重傷の二人を庇うように前線に出て戦っている傷だらけの一護がいた。
「あれが破面…」
緊張感が漂う戦場。対峙している破面は二体。一体は翡翠の両眼に、痺身で真っ白な肌をした黒髪の男。もう一体は下顎骨を象った仮面の名残を着けており、辮髪をしている色黒の巨漢男だ。
「(“雑魚”じゃないのは一目瞭然だな…)」
状況から察して、どちらが不利の立場か、一目で理解った。梨央は面倒臭そうに溜息を零す。
「…蒼生くんの勘は当たるから怖いなァ。仕方ない、加勢するか」
背中に背負っている鞘から刀を引き抜く。太陽の光が刀身に反射して、ギラリと鋭く光る。そして…梨央の顔つきが変わった。
「終わりだガキ!!潰れて消えろ!!!」
巨漢男・ヤミーの拳が風の如く、凄まじい勢いで一護に振り下ろされる。ドゴッ!!っと重くて鈍い音が響き、ヤミーはニヤリと笑う。
「?」
“人を潰した感触がしない”。訝しげに眉を顰め、不思議そうな顔で振り下ろした拳を退けようとしたが…
「やあ。」
愉しげな声色がヤミーともう一体の破面の耳に届く。一護に当たることなくヤミーの拳は一本の刀で防ぎ止められていた。ガチガチと音を立てているが、梨央は余裕の笑みで受け止めている。
「!」
翡翠の両眼の破面が梨央の存在に気付く。
「大丈夫?」
片手で握った刀でヤミーの拳を受け止めたまま、首を後ろに向け、ニコリと一護に笑いかける。
「梨央!?」
瞬歩で一護の前に現れ、刀でヤミーの拳を軽々と防ぎ止めた人物が自分の知り合いだと知って、一護は驚愕した。
「何だ?誰だてめえ?」
ヤミーは拳を退け、苛立つ声と表情で言う。梨央は一護に向けていた笑みを消し、顔を前に戻すと、冷たい眼でヤミーを見上げた。
「笑止。口の利き方に気をつけろ」
「あぁ?」
「自分の情報を敵にくれてやる馬鹿がどこにいるんだよ」
「何だと…?」
「よくも私の友達を傷付けたな」
「……………」
「無傷で帰すと思うなよ」
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