第17章 ゲンセ ト カンチガイ
【一番隊舎】
「総隊長は鬼ですか」
「今日は機嫌が悪いのぅ」
「寝てるところを青蝶の羽根でバシバシ叩き起こされたんです。睡眠を妨害されるの、好きじゃないんですよ」
「中々起きぬお主が悪い」
「せっかく寝てたのに…。大体あの子、私に対しての扱いが雑!女の子の顔を遠慮なしに叩くなんて酷すぎる。ああもう。」
「お主の寝起きの悪さは変わらんの」
「ふぁー…」
まだ寝ぼけ眼で頭が覚醒していない中、山本は真剣な表情で云う。
「本題に入る」
「本題?」
「零番隊隊長仁科梨央。お主を明日付けにて無期限の現世行きを命ずる」
「……は?」
山本の言葉を上手く吞み込めず、あっけらんとした表情を浮かべ、しばし沈黙する。
「目は覚めたか?」
「覚めましたが…急すぎませんか?」
「無理もない。今朝決まったのじゃ。現世と言うても行き先は空座町」
「空座町…?」
「近頃、空座町に大量の虚が出現するとの報告を受けた。護廷では処理し切れん故、最も戦力になるお主が抜擢された」
「空座町ですか…」
「引き受けてくれるかの?」
「もちろんです」
「頼んだぞ」
頭を下げ、梨央はその場を後にした。
◇◆◇
「ただいま」
「おかえり〜」
零番隊舎に戻ると応接室には全員が集まっていた。それだけで無理やり起こされて不機嫌だった梨央の表情が和らいだ。
「ちゃんと遅刻しないで行けた?」
「心配性だな雅。私が遅刻する筈ないじゃん」
「君は遅刻常習犯だから」
「…痛いトコ突くね」
温和な笑みで毒を吐いた雅に苦笑する。
「ジジイの話なんだって?」
「明日から無期限の現世行きを命じられた」
「現世?」
「また急っスね」
「行き先は決まったの?」
「空座町だよ」
「確かそこって朽木ルキアの担当区域じゃなかった?」
「今は後任の車谷善之助って人が担当だよ」
「誰?」
「さぁ?」
詩調と霙は顔を合わせ首を傾げた。
「ま、頑張るよ。さて…十番隊に書類でも届けてくるかな」
書類を持ち、梨央は隊舎を出て行った。
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