第16章 トモダチ ト ナカナオリ
「いらっしゃいませ」
お昼時、静霊廷に赴くと、お目当ての甘味処を見つけ店内に入る。すると割烹着を纏った店員が丁寧なお辞儀をした。
「混んでますね」
「申し訳ありません。只今全てのお席が満席でして…」
ぐるりと店内を見回すとお昼時もあってか、年齢層の様々な客達で埋まっていた。
「今日からスイーツの半額キャンペーンを実施しておりまして…そのほとんどのお客様で満席状態なんです」
「(やっぱ考えることはみんな同じだな。)」
「しかしお一人様でしたら、相席という形でご案内は出来るのですが…如何致しましょう?」
「別にそちらで構いませんよ」
「有難う御座います。えーとお席は…ああ、丁度あちらのお席が空いておりますね」
店員が手で示した方向に目で追えば、梨央は罰が悪そうに顔をしかめた。
「(…よりによってあの席か。)」
そこにいたのは4人の男女。
「仕方ない」
軽く溜息を溢し、席まで向かう。
「相席失礼します」
控えめに声を掛けると4人が一斉に顔を上げた。そのうちの二人は梨央の顔を見るなり、驚いた表情で身体を硬直させた。
「「っ………!!?」」
少し霊圧が乱れ、動揺しているのが判る。梨央は大して気にする様子も無く、二人から視線を逸らすと、空いている席に腰を下ろす。
「あら、梨央じゃない」
「お久しぶりです」
「あんたもお昼?」
「はい」
乱菊にそう言われ言葉を返す。敢えて二人の方は見なかった。きっと青ざめた顔をしていると思ったからだ。
「珍しい組み合わせですね」
「隊長の奢りだって言うから着いて来ただけよ。その二人も誘ってね。雛森、恋次、もう食べないの?さっきから手が止まってるわよ」
わざとらしく聞いてくる乱菊に恋次と雛森はビクッと身体を跳ねつかせた。
「あ、あの…仁科隊長…」
「俺達…謝らなきゃいけない事が…」
震える声で告げる二人に梨央は言う。
「別に気にしてないよ」
「「!!」」
「もう終わった事だし」
メニュー表を見ながら淡々と告げる。二人は驚いた顔で梨央を見た。
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