第16章 トモダチ ト ナカナオリ
地下監獄最上層
第零監獄『────』
時間を支配し
光を奪い
全てを“無”にする
闇に包まれた監獄である───。
「…お兄様、いる?」
「お前の傍にいるよ」
「どこ?暗くて何も見えないわ…」
罪を犯した兄妹は
硝子壁を一枚隔てた両側に
収監されている。
「寒くないか?」
「大丈夫よ」
「怖くないか?」
「お兄様がいるから平気」
「寂しくないか?」
「…すごく寂しいわ」
暗闇に包まれた視界は何も見えず、悠人の姿すら認識できない。此処に収監されてから随分と時間が経ち、目が慣れても良い筈なのだが、一向に闇に覆われたままだった。
「此処…とても悍ましい場所ね」
「“闇に包まれた監獄”か…。本当に何も見えねぇし、外の世界と切り離されたみたいだな…」
「(この監獄の管理者はあの女。ということは…此処はあの女が造ったって事?)」
この世で最も憎い相手の存在を思い出しただけで激しい怒りと、果てしない恐怖が襲う。
「(悪趣味だわ。)」
桃香は忌々しそうに顔をしかめた。
「なァ桃香。もし此処から脱獄できる…て言ったら、どうする?」
「え?」
「お前を貶めた連中の悔しがる顔、拝みたくないか?」
「どういうこと…?」
悠人は看守に聞こえない程度の声で、困惑している桃香に言う。
「此処から逃げるんだよ」
「!」
「脱獄だ」
悠人はニヤリと不敵に笑った。
「脱獄って…一体どうやって?」
「協力者がいる」
「協力者?」
「特別隊首会が執り行われる日、ある男が俺の前に現れて言ったんだ」
『もし捕まっても俺が逃がしてやるよ』
『お前の気持ちは痛いほど解る。俺も…彼処に殺したいほど憎い奴がいるからな』
『だから俺がお前らを───助けてやる。』
「その男、信用できるの?」
「最初は警戒したが話を聞く限り、そいつも護廷に殺したいほど憎い奴がいるらしい。だから護廷を潰せるなら協力してくれると言ってくれた」
「でもこの監獄を脱獄するのは不可能よ。監視カメラが至る所に設置されてるし、看守の数だって…」
「それが可能なんだ」
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