第12章 零番隊復活
ガッ
「死んだか?」
恋次は傷だらけの身体で地面に伏せる流歌に蹴りを入れる。その憎しみの込もった眼は流歌を見下ろしていた。
「そろそろ桃香に謝る気になったろ?」
「……………」
「頼むから…あいつに謝れ。桃香をこれ以上、怯えさせないでくれよ」
「……て……ない……」
ゴホッと咳をし、伏せた状態のまま、顔だけを後ろに向け、恋次を見る。
「僕は何も…やってない」
静まる倉庫。その沈黙すら恐ろしい。
「……………」
恋次は無言で片足を後ろに下げ、一気に蹴り上げる。
ドガッ!
「うぐっ!!」
腹部に強烈な圧迫感が襲い、軽く吹っ飛んだ流歌は壁に激突する。
「ゲホッ!ゴホッ!……っは……」
「どこまで最低なんだよてめえはっ!!」
激しく激昂する恋次は声を張り上げる。
「桃香はてめえのせいで傷ついたんだよ!!今も夢にお前が出てくるって苦しんでる!!あの時のこと思い出して怯えてんだよ!!」
「……………」
「それなのにてめえは…ほんの少しでも悪かったとか思わねーのか!?」
「………………」
「クソ…ッ!!」
何も喋らない流歌に苛立つ恋次は壁を素手で殴る。
「…好きな女を傷つけてまで自分のものにしてえのかよ。それであいつの心がお前に向くとでも思ったのかよ。…てめえの愛は歪んでる。とっとと地獄に堕ちろ」
怒りと憎しみの込もる声で流歌を睨み付けると、恋次は倉庫を出て行った。
「くそ…本気で蹴りやがって」
ボロボロの身体を起こす。
「っ…あー…何本か折れてる」
舌打ちをした流歌は腹部に手を翳し、自分で自分を治療する。
「これでよし」
痣も消え、死覇装に付いた汚れを手で払うと、少し開いた小窓から一匹の青い蝶が入って来た。
「青蝶…?」
差し出した指先に止まる。
《零番隊隊長、仁科梨央に告ぐ。総隊長の命により、至急一番隊執務室に集合せよ。》
「総隊長からの呼び出し…。一体なんの用だ?説教される覚えはないんだが…」
青蝶と共に倉庫を出た流歌は瞬歩で一番隊舎へと向かった。
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