第11章 太陽の木漏れ日
握手した手を離すと、どこからか甘い匂いが漂った。
「隊長、何か持ってます?」
「あぁ、コレか」
日番谷は透明な袋に入った金平糖を取り出す。星の形をした色とりどりの金平糖が詰められていた。
「ここに来る前に松本から渡された」
「そうでしたか」
「けど甘いモンがあまり好きじゃなくてな…。甘納豆は好きだが」
「(何で乱菊さんは持たせたんだろう?)」
「良かったら貰ってくれねえか?」
「いいんですか?」
流歌は思わず瞳を輝かせる。
「あぁ、貰ってくれると助かる」
「では…頂きます」
掌に袋が乗せられ、それを嬉しそうに見つめる流歌。
「お前は甘いもの好きなのか?」
「はい。大好物です」
袋から金平糖を一粒摘み、口に入れる。
「うん…美味しい」
コロコロと舌先で金平糖を転がす。その甘さに思わず顔が緩んでしまう。日番谷は微かに目を見開いた。そして小さく呟く。
「そうか…お前はそんなふうに笑うんだな」
「?何か言いました?」
「何でもねえよ」
微笑を浮かべ、軽く首を振った。
「宜しければ隊長もお一つどうぞ」
「ありがとう」
袋を傾けて日番谷の掌に金平糖を出す。それを口に含んだ日番谷はどこか切なげに笑んで言った。
「美味いな」
「はい」
「…本当に悪かったな」
「もう謝らないで下さい。隊長は精一杯の謝罪を僕にしてくれました。それだけで本当に十分です」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
心地よい風が吹き、二人の髪を揺らす。小さく笑んだ二人は空を見上げた。
そして、二人の様子を物陰から窺っていた乱菊は安心するように笑みを溢すと、嬉しそうに言った。
「───よかったわね、流歌」
どうか
優しい風の音と共に包まれた
太陽の木漏れ日が
もう少しだけ
続きますように──……
next…