第11章 太陽の木漏れ日
「これから鬼灯さんのお見舞い?」
「というより様子を見に行くだけ」
「なら丁度よかった。報告があるんだ」
「報告?」
「冴島桃香の“過去の悪事”について調べた」
「へぇ…それは興味深い」
「彼女と同じ村の出身だって言う女性から話を聞けたんだ。冴島桃香について知りたいって言ったら快く引き受けてくれたよ」
“あの女を忘れたことなんてないわ”
“私の大切な家族を奪った…悪魔なんだもの”
“本当に忌々しい女…虫酸が走る”
「悪魔か…。その女性は余程あの女を憎んでるんだな。それで?冴島桃香の悪事って何だ?」
「聞いて驚くと思うよ」
「もったいぶらず早く」
「“窃盗”、“暴行”、“脅迫”」
「黒歴史だな」
「そして…“殺人”」
「殺人!?人を殺したのか!?」
「彼女は友達の家から無断で宝石を盗んだ。そのことを知った友達が冴島桃香を問い詰めた。清々しい程に開き直ったそうだよ」
「根っからの悪女だな」
「友達の態度に腹を立てた冴島桃香は当時の取り巻き達を使って友達を暴行した。そして脅したんだ。“もし逆らえば命はない”ってね」
「なるほど…。最後の殺人は?」
「冴島桃香が直接手を下したわけじゃない。正しくは“死に追いやった”だよ」
「もしかして…自殺か?」
雅はコクッと頷いた。
「実は自殺した子は…話を聞いた女性の妹なんだ」
「…そうか。だから“悪魔”…か。」
「彼女のした悪事は決して許されない」
「当たり前だ」
「でもね梨央、冴島桃香の起こした悪事は全て無かったことにされてるんだ」
「…どういうこと?」
「冴島桃香に兄がいるのは知ってる?」
「あぁ、書類に家族構成が載ってるからな」
「その兄が全てもみ消したんだ」
「は?」
「その女性によれば、彼はとても妹を可愛がっていたそうだよ。それはもう…恋人のように大切に育てたそうだ」
「シスコンの域を超えてるな」
気持ち悪そうに顔を歪める。
「もみ消した…“見逃した”ってことだろ?」
「うん。彼女の悪事を兄は見逃した」
「ハァ…呆れるな。でもどうして村の人達は何も言わなかったの?」
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