第11章 太陽の木漏れ日
「これはこれは…流祇流十四席」
雅が近付いて来ると、男は慌てて拳を引っ込める。
「もしかして取り込み中だった?」
「いえ、もう済みました」
「待てよ…俺達はまだ…」
「じゃあ僕の見間違いだったんですね」
前髪で隠れた目は見えないが、口元に柔らかい弧を描いた。
「さっきそちらの隊士が拳を振り上げてるように見えたので驚いてしまって」
「!」
「もしかして寄ってたかって新人をイジメてるのかなって思ったので。…だって卑怯じゃないですか。暴力で片付けようなんて…そんなの死神どころか人として失格ですよね?」
温和な表情で言葉には鋭いものを感じた。男達は雅を見てぞわりと背筋を凍らせる。
「先輩方もそう思いますよね?」
「っ………」
「人を傷つけることを楽しんでる。そんな人が死神でいることに何の意味があるんでしょう。隊士としての役目を新人イジメと誤解しているんですかね」
「な、何だよお前…」
「オレ達がコイツをイジメてたって言うのか…?」
「とんでもない。僕は信じてますから。先輩方が…そんな下らないことをして楽しんでいる卑怯な人達ではないことを…ね?」
「「「っ───!!!」」」
その時の雅が、恐ろしく思えた。
「(怒らせると怖いんだぞ…うちの三席は。)」
まぁ…これが無意識なんだから
余計にタチが悪いんだよな
「用が済んだならいいですか?
神崎君を探していたんです」
「俺達の用はまだ───…」
「……………」
「い、いや…何でもねえよ」
「もう行こうぜ…」
「何なんだよあいつ…!」
無言の圧に堪えられず、男達はバタバタとその場から走り去って行った。
「僕何かした?」
「気にしなくていいよ、無自覚さん」
「?」
雅は不思議そうな顔をした。
「キミが通りかかってくれて助かった」
「浮竹隊長に薬を届けに行った帰りに君を見かけたんだ。まさか隊士達に囲まれてるなんて思わなかったよ」
「はは」
「しかも殴られそうになっても避けようとしないし」
「どの道奴らを逆上させるだけだからな」
「あまり無茶すると蒼生が心配するよ」
「わかってる」
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