第11章 太陽の木漏れ日
「生きたがりなんだよ」
「何だかんだ…蒼ちゃんも…みっくんも…るーたんも…みんなと一緒にいたいんだね…」
霙は小さく笑った。
「とりあえず応急処置は終わりよ」
「ご苦労様」
「(あ…息、苦しくなくなった…)」
さっきまで息を吸うのにも激痛が襲っていたというのに、詩調の治療のおかげで、呼吸をするのも楽になった。
「痣も消えたみたいだな」
「痛いところはない?」
「うん。大丈夫。治してくれてありがと、しぃちゃん!」
「仲間の為だもの。これくらいは余裕よ」
ようやく霙にいつもの笑顔が戻る。すると一緒に連れて来ていたリキュールはトボトボと霙に歩み寄り、ピタッと躰をくっ付けた。
「リキュール…?」
何も言わずにただ、霙の傍に寄り添うリキュールを見て、霙は柔らかく笑む。
「心配させてごめんね」
表情は変わらないが、リキュールは霙のことをとても心配していた。霙に頭を撫でられ、首を横に振る。
「霙の異変に気付いたのはリキュールだったな」
「リキュールが…?」
「突然バタついて大変だったのよ」
「そして詩調がこの子の“言霊”を感知した。キミが危険な目に遭っているってね…」
「霙の霊圧は弱まっていて、感知しにくかったからリキュールが場所を教えてくれて助かったわ」
「そうだったんだ…」
「やっぱりこの子は…この世に生まれてくる運命だったんだよ」
「どういう意味…?」
その真意を問う霙だが、梨央は何も語らず、意味深な笑みを浮かべた。
「卯ノ花隊長に連絡して事情を話したら、部屋を用意してくれるそうよ」
いつの間にか、伝令神機で卯ノ花に連絡を取っていた詩調が言った。
「それは助かる。霙、起き上がれるか?」
「うん。もう平気!」
ゆっくりと起き上がった霙は、立ち上がると二人に向けてニコッと笑んで見せる。
「詳しい話はあっちで聞こう」
「男共にも連絡した方がいいわね」
「裏から回るように伝えてくれ。普通に門から入るよりは良いだろうからな」
「分かったわ」
伝令神機を使い、蒼生、雅、琉生の三人に連絡して、三人は瞬歩で四番隊舎へと向かった。
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