第11章 太陽の木漏れ日
【四番隊舎】
「ふんふふーん♪」
「上機嫌ですね、霙さん」
「れっちゃん!」
呼んでから霙は慌てて口を手で押さえる。
「貴女にそう呼ばれるのは懐かしいです」
「ついうっかり呼んじゃった…。
今の梨央ちゃんに内緒ね!?」
「もちろんです。ところで…鼻歌を歌ってしまうほど何か楽しみなことでもあるんですか?」
「あのね…」
霙は卯ノ花の耳元に手を当て
口を近づけコソッと耳打ちをする。
「お昼を食べに梨央ちゃんとしぃちゃんと約束してるの。この前しぃちゃんは行けなかったから…」
「そうでしたか」
「今日もたくさん食べるんだ〜!」
「では早めに休憩に入って良いですよ」
「本当!?」
「えぇ。楽しんで来てくださいね」
「わーい!ありがと卯ノ花隊長〜!
じゃあ早速行ってきまーす!」
嬉しそうにパタパタと走って行った霙の後ろ姿を卯ノ花は優しく笑んで見送った。
「らんらんるー♪らるらるらー♪」
待ち合わせ場所に向かうまでの足取りが軽く感じる。霙はニコニコと笑顔を浮かべながら歩いていた。
「今日は何食べよっかなー♪」
「よぉ、鬼灯」
ピタッ
「……………」
後ろから聞こえた声に足を止める。その声の持ち主が男だと知ると、霙はニコニコ笑顔を一瞬で消した。
「霙に何か用?」
振り向いた先には数人の男達が揃っている。
「少し話がある」
「霙はないよ」
「大人しく従った方が身の為だぜ」
「これから大事な用があるから無理」
「そんなもん後からでもいいだろ」
「しつこい男はモテないよ」
「なっ……!」
「鬼灯…テメェ…」
「図星突かれて狼狽えるなんてダサー」
「いいから付き合えってんだよ!」
「無理って言ってるじゃん」
「チッ…聞き分けが悪ィな。
おい、引っ張って連れて来い」
男達が霙を挟み込むと両腕を拘束する。
「何すんの!」
「お前が言うこと聞かないからだろ」
「離して!」
「着いたら解放してやるよ」
両足で地面を踏ん張っても力には敵わず、霙は無理やり身体を引っ張られ、男達によって何処かに連行されて行った。
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