第9章 遠き日の思い出
「私は良い仲間を持ったな」
「霙達が出会ったのは運命だったんだよ」
「それは素晴らしい運命だな」
「でしょー」
他愛のない話をしていると、全てのデザートがテーブルに運ばれ、ギュウギュウに並べられた。
「わぁ〜!美味しそうー!」
「アイスは先に食べた方がいいな」
「わかった!」
「いただきます」
「いっただっきまぁーすっ!」
ぱくっとアイスを口に入れると霙の目が途端にキラキラと輝いた。
「何これウマ!濃厚!」
「ブルーベリーとラズベリーの酸味が程よく利いてバニラと合うな」
「しぃちゃんにも食べさせたかったな〜」
「また今度三人で来よう」
「うん!」
ぺろりとアイスを平らげると近くにあったデザートから手を付け、二人の胃袋に吸い込まれていく。
「桜桃の羊羹なんて初めて聞いた。抹茶の羊羹は食べたことがあるけど…甘味が強くて頬が落ちそう〜」
頬に手を当て、羊羹を美味しそうに頬張る霙。その様子に梨央も笑顔が浮かぶ。
「こんなに頼んだら蒼ちゃんに叱られるねー」
「見るだけで胸焼けすると思うよ」
「みっくんにも食べさせてあげたかったなー」
「仕方ないよ。今日は用事があるから零番隊舎には寄れないって言ってたし」
「用事かー。つまんないのー」
「雅にも用事というものが存在する。また別の機会にでも誘えばいいさ」
「じゃあ…るーたんは?」
「最近ナンパして知り合った女の子とデート中。今頃お茶して幸せな一時を過ごしてるんじゃないかな」
「ふーん…」
「帰って来たら“臭い”を落とさせないとな」
「るーたんの女癖の悪さも変わらないね」
「それが琉生の生き方なんだろう。彼は…人のぬくもりが恋しくなる男だからな」
「寂しがりなるーたん」
「(ただ…そこに“愛”はないけどね…)」
「帰ってきたらるーたんで遊ぼーっと」
「あまりイジメてやるな」
「人聞き悪いなー梨央ちゃんてば。霙はるーたんが退屈そうにしてるから仕方なく一緒に遊んであげてるのー」
ぷくーっと頬を膨らませる。
「ほら、むくれてないで残りのデザートも食べちゃおう」
「おー!」
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