第8章 カタウデの少女
『吠葛』
そこは東流魂街12地区に存在する
規模の小さい村の集落で
治安は低く、村人に危険性がないため
生活の自由度は高い
「ふむ…」
村に着いた梨央は顎に手を当て、周囲を見回す。
「いくら治安が低いとは言え、この生活環境は良くないな」
荒れ果てた大地に
汚れた格好の村人達
濁った井戸水を汲んでいる子供
枯れた畑を耕す大人
「うえー色が変色してるよ〜!」
足元を見下ろした霙が気持ち悪そうに顔を歪める。砂だらけの果実に沢山の蟻が群がっていた。
「腐ってる…」
詩調も顔を歪めて果実を見る。新鮮さを失った果実は色が変色しており、腹を空かせた蟻達が小分けにした果実の一部を巣に運んでいる。
「……………」
霙はしゃがんで蟻達が入って行く穴をじーっと観察している。
「どうした?」
「…穴、塞いじゃおうかな」
「やめろ」
悪戯心に火が付いた霙は砂で穴を塞ごうとした。それを近くで見ていた蒼生がすかさず止めに入る。
「やだなぁー蒼ちゃん。冗談に決まってるじゃん。霙そんな酷い事しないよ〜」
「嘘吐け。明らかに目が輝いてたぞ。穴塞ぐ気満々だったじゃねえか」
「…えへ☆」
舌を出し、頭をコツンと軽く叩いた霙は可愛らしくウインクをした。
「みんな顔色が悪いね」
雅は心配顔で村人達を見る。
食料が行き届いてないのか、顔は痩せこけ、ほとんどの村人達から生気を感じられなかった。
「なんかゾンビみたい〜!」
「まるで人形みたいだわ」
「ここが華月詩調の生まれた場所…」
「あー!死神だあ〜!」
外で遊んでいた子供達が梨央達に駆け寄る。その声に反応した大人達が一斉に振り返った。
「ねぇねぇ!
その服って死神が着るやつでしょ?」
「お姉ちゃん達は死神なのー?」
「そうだよ」
「やっぱりー!」
答えが当たって嬉しいのか、子供達は嬉しそうにはしゃいだ。子供と同じ目線になるように梨央はしゃがんで言った。
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