第8章 『素直になれない不器用カノジョ。』 及川徹
「え…?」
頬に手を当て硬直する及川。
これって告白するより恥ずかしいんじゃ…
今更ながら恥ずかしくなる。
『わ…たし…帰る!』
「ちょっ!逃げないで!」
逃げ出そうとした私の腕をぎりぎりで掴み私は再度及川の胸の中に。
『や…』
「夏乃、好き。大好き。夏乃は俺のこと好き?」
『恥ずかし…』
「今は俺しかいないよ?ねえ、教えて?夏乃が好きなのは誰?」
『ぉ…いかわ…』
「俺のこと、好き?」
『……すき。』
そう小声で呟けば先ほどよりも強く、強く抱きしめられる。
「よかったぁぁぁぁぁぁ…」
『…へ?』
「いや、ね?相談してたんだ。マッキー達に。
そしたら今日2人きりにしてくれるって言うからさー。」
え?
今日みんな帰ったのってわざと?
まじか…
「夏乃、好きだよー?」
にへらーっと笑う及川が憎たらしい。
『及川なんて知らない…』
「あ!それ!」
体育館のど真ん中で急に大きな声を上げる及川。
『何…?』
「夏乃、俺の彼女なんだからもう苗字呼び禁止ー!」
名前で呼んでーと言う及川。
ポケットに入れていたプレゼントを引っ張り出し、顔面に投げつけ照れ隠し。
『プレゼント渡すからこれ以上は無理!』
「まじで!プレゼントないって言ってたから及川さんまじで嬉しい!」
喜ぶ及川から目をそらし、時計を見ればそこそこ遅い時間。
『もう時間やばくない?早く片付けて帰るよ?』
聞こえませんように。
そう祈りながら小さく、小さく私は呟く。
『とーる…』
「わかったよ…夏乃」
聞こえたのか聞こえなかったからわからない。
でも、嬉しそうにボールを拾っていく及川。
そんな、後ろ姿を見ながら私は小さな声で呟いた。
「誕生日おめでとう。徹。」
そういうと、及川は私の方を振り返り笑った。
end