第7章 ぽにーてーる☆せったーず。
菅原孝支の場合。
am8:30
「お!それいいなー!夏乃。」
『何が?』
朝、教室に入るとすぐに声をかけられる。
私は鞄を席に置き、そのまま声をかけてきた菅原の机まで歩いた。
「その髪型。馬のしっぽみたいだな。」
『そりゃあね?ポニーテールっていうの。』
髪型の説明をすればへーっと感心する菅原。
『髪の毛伸ばしてるけど暑くてさー。』
ぱたぱたと手で自分を仰げば、菅原も苦笑い。
「確かに…朝練だけで汗だくだわ。」
『そっかぁ、菅原部活引退してないんだもんね?』
「春高予選まで残るつもり。後輩が頑張るんだから負けてらんねーべ。」
にかりと笑った菅原。
笑顔が眩しい。
『じゃあ、今度差し入れでも持って行こうか?男バレに。』
暑い中頑張ってるもんねーなんて呟けば、菅原の顔が戸惑いを見せる。
「や!別に差し入れなんて!」
『えー!せっかくクラスメートが頑張ってるんだから!』
私がそう言うと、菅原は周りをきょろきょろと見渡し、そして私との距離を縮める。
「俺は個人的に差し入れ欲しいんだけど…」
そう言う菅原の顔は真剣で、
見つめられた瞳が離せない。
「俺さ…」
机の上に置いた手の上に菅原の手が重なる。
「夏乃のこと、好きだ。」
ざわざわと話し声がする教室の中なのに
菅原の声しか耳に入らない。
『私も…』
そう口に出せば、菅原の顔がぱあっと輝き、机越しに抱きしめられた。
クラス中から冷やかしが起きるまで
あと数秒。
next→影山。