第6章 『初夏の日は落ち行く。』菅原孝支
小さな声で名前を呼ぶと菅原が動きを止める。顔を見ると口元を隠すように手を当てている。
「不意打ちとか…まじやべ…」
『菅原顔真っ赤…』
「………っもうっ!いくべ?」
ぐいぐい手を引っ張られるから私は走って追いかける。
『まってまって!菅原!速い!』
走り抜けていく廊下はもう薄暗く日の光はもうない。
私は大きく息を吸うとばたばたと2人分の足音にかき消されないように声を張り上げた。
『孝支ぃ!誕生日おめでとー!大好きー!』
振り返った菅原は、顔を赤らめながら最高のスマイルを私に向けて送る。
「俺も夏乃大好きだー!」
お互いに叫び合うと私たちは日の暮れかけた蒸し暑い外に飛び出した。
end