第41章 『嫌い、すき。』孤爪研磨 R18
「本当にごめん。自分のことしか考えてなくて。」
久々の温もりと研磨の香りに胸がきゅうとなる。
それでも辛い気持ちを思い出してしまい何も言わずに研磨の肩に顔を埋める。
「ずっと忘れられなくて。同窓会のときにやっとおれのところに戻ってきてくれたって勝手に安心してた。前と同じことして夏乃にまた寂しい思いさせた。」
「………………ずっと?」
聞き逃してはいけない言葉を聞いた気がして顔を上げると、困ったようにふいと顔を逸らされる。
「……ん、ずっと。高校の時から好きの気持ちは変わってない。会わなくなってからも夏乃のこと忘れたことなくて…」
逸らされた顔がじわじわと朱に染まる。本人もそれに気づき私の視線から隠れるようにパーカーのフードを深く被った。
「あの日出て行ってから追いかけようと思ったのに、夏乃のこと何も知らなさすぎて足が動かなかった。連絡手段もメッセージアプリだけだったし。」
「私がブロックしちゃったからね。」
私が発した言葉にこちらに顔を戻しふふ、と笑う研磨。
「だから、どうやって夏乃を探そうか考えてたんだけど、今日のお昼前に鍵届いて、いても経ってもいられなくてそのまま家出てきた。すぐに住所検索してマンション名確認して…嘘つかれてたらどうしようって思ったけどきて良かった。」
可愛らしく笑う研磨の言葉にいちど首を傾げる。枕元の充電器を差しっぱなしの端末に手を伸ばし確認すればもうすぐ17時。研磨の家からここまで電車と徒歩で30分もかからない。
「研磨、ここ着いてからどのくらい待ってた。」
「ここ着いたのはちょうど昼くらいかな。」
今の時間から逆算すれば4時間以上家の前で待たせてしまったことに気づき謝ろうとすれば、研磨の手のひらが口を覆う。
「今までおれの方が待たせてばっかりだったから。おれこそごめん。」
ううん、と首を振れば手のひらが離れていく。
「それに待ってる間も夏乃とのこと思い出してたから待ってるって感覚はなかった。」
そんなふうにはにかむ研磨に頑なに閉じていた胸の奥がきゅんとなる。