第36章 『残業終わりの甘い誘惑 後編』黒尾鉄朗 R18
そのあとは一瞬だった。
骨ばった手が私の手を包み、ぐいと前へ引く。
そのままの勢いで私たちは一番近い、スタイリッシュな外観のホテルへと足を踏み入れた。
部屋を選び
廊下を歩き
部屋の前の点滅したライトが光る部屋へと入った。
背後にドアが閉まる音がする。
「かちょ…」
名前を呼んだときには、入って来たドアに背中を押し付けられていた。
どさり、と鞄が落ちる。
少しあがった息が混ざる、名前を呼ぶ声。
顔を上げればキスが降って来た。
いつもの大人の余裕なんて感じられない。
獣のようながっつくようなキス。
息の合間にこじ開けられた唇に、熱く滑らかな舌が侵入し口内を犯す。
上がる息と舌を交わらせる音が部屋に響く。
余裕のないキスをしながら、私はネクタイを外し課長は私のシャツのボタンを外す。
早く、はやく、ひとつになりたい。
その思いだけで唇を触れさせながら手を動かした。
「ひゃんっ!」
課長に乱されたシャツから忍び込んだ指が冷たくて、思わず声が出る。
「あ、わり…」
私の声を聞いた課長はおもわず、といったように手を引くけれど、私はその手を捕まえる。
「やめ…ないで…」
課長の瞳を見つめた刹那、課長の…黒尾さんの喉が鳴った。