第34章 『きみのブランケット』 孤爪研磨
「はい、おしまい。」
そう言って離せば、委員長はセーターの袖の中に指先まで埋めていく。
「…あ、ありがとう。」
ほかほかの、柔らかな手のひら。
ずっと握っていたいって思った。
珍しく、興味がある。
"人間"に興味を持ったのは久しぶり。
「私…帰るね。」
「ねえ、委員長。
ん、違う。」
「夏乃さん。」
困ったような目が驚きでまん丸に変わる。
「おれ、夏乃さんのこと」
「好きになったかも。」
くすり、と笑えば声、というより音を発しながら夏乃さんは床にぺたりと座り込んだ。
くるくる変わる表情、いいな。
次はどんな表情かな、これにはどんな表情をしてくれるかな。
床にしゃがみ込んだ夏乃さんの前にしゃがみこむとそっと指先で顔の輪郭をなぞる。
「おれのものになって。」
今にも泣き出しそうな彼女の下瞼に唇を寄せて、おれは笑った。
〜kenma kozume happybirthday〜
end