第34章 『きみのブランケット』 孤爪研磨
「孤爪….くん?」
小さな囁くような声。
そんな凜とした声が上から降ってくる。
目を開ければがらんどうな教室。
指している日差しはオレンジ色で、そろそろ暮れることを意味していた。
頭を上げれば真っ赤な顔をした委員長が目の前に座っていた。
「おれ、寝てた?」
「うん…6限目の古文から今の時間まで。
あの、幼馴染の先輩も来てたけど起こさないで帰っちゃった…」
時計を見れば時刻はすでに5時半。
ポケットからスマホを取り出せばメッセージ1件、クロ。
"休みって言っておいた。部活終わった頃に部室に来いよ。"
あと少しで部活も終わるし、クロの計らいで部活も休めているからもう少しゆっくりしよう。
そんな考えをしていた時にふと気づいた。
肩にふわりとした何かがかけられていることに。
それを取れば、目の前の女の子の顔が赤くなり読んでいた本に顔を埋めた。
「これ、委員長の?」
「…うん。ブレザー着てなくて、寒くなってきてたから…」
ふわふわ。
女の子が好きそうな素材。
柔らかなグレーのブランケット。
それを肩から下ろせば少し肌寒くてふるりと体が震えた。
「委員長こそ寒かったでしょ?ありがと。」
「ううん、私はセーターもブレザーも着てるしタイツも履いてるし…」
「指先、真っ白だよ。」
嘘を見抜かれた委員長はとっさに本を置きセーターで指先を隠す。
「寒いなら寒いっていいなよ。」
借りていたブランケットを肩からかけてあげれば申し訳なさそうな顔。
肩にブランケットをかけてあげたけれど、肝心の指先は出たまま。
「手、貸して。」
そう言い委員長の手に自分の手を重ねる。
ひやり、と冷え切り氷のような指先。
「冷たい…」
思わず呟き、はあと息を吐きかければ小さくおれを呼ぶ声。
ちらりとそちらを見れば、顔がトマトより真っ赤になった委員長が泣きそうな顔でおれを見ている。
「こづめ…くんっ…離して?」
「やだ。温まるまで離さない。」
ブランケットのお礼、と呟き再び息を吹きかける。
最初は抵抗しようと手を引いていたけれど、その度に痛くない程度に腕を掴んでいたら諦めたのかされるがまま。
ほかほかに温めて手を離せば茹るんじゃないかってくらい顔を真っ赤にさせた委員長と目があった。