第28章 『朧月の夜。』 嶋田誠 R18
「これ、新入社員歓迎会のお知らせ。
どうする?参加する?」
そう嶋田さんに聞かれたのは5月中旬のこと。
嶋田さんが渡してくれたお知らせを見ると、6月頭の金曜日に嶋田マートの従業員さん、その家族で食事会…という名の飲み会をするとの連絡だった。
どうしてそのお知らせを私が渡されているかって?
それは私が嶋田マートの従業員だから。
嶋田さんと付き合い始めてから気づいたのだけれど、専門学生である私と、社会人…嶋田マートで働く嶋田さんには時間のズレがある。
私が学校の時は嶋田さんは社員さんやパートさんが多いから比較的仕事が落ち着く。
でも私が学校が終わって嶋田マートに遊びにいく時間帯は、家庭のある従業員さんたちは家に帰宅。
来店する人は少ないけれど、それでも仕事中構ってもらえるほど暇があるわけじゃない。
そこで私、考えた。
嶋田マートでバイトすればいいじゃない。
私は嶋田さんを少しでも長い間見ていたい。
そして嶋田さんは夕方からの忙しい時間にアルバイトが1人増える。
ナイスな考えを導き出した私は、早速当日に履歴書を買い、専門学生の授業の合間に書き上げ、その日のうちに嶋田マートに持って行った。
まあ、夕方の仕事はもともとお手伝いしてたから、即戦力ってことで即日OK。
その日から夕方から閉店まで働き始めた。
パートのママさんやおばちゃん達は、若い私が入ってきたことが嬉しかったのか、一人暮らしだと知れ渡るや否や、やれおやつだ、やれ夕飯のおかずだと甲斐甲斐しくお世話を受けている。
そんなこんなで私は、嶋田さんの元でたくさんの方に可愛がってもらっている。