第13章 『それは色付く木の葉のように。』木葉秋紀 R15
木葉は私に触れなくなった。
2人きりの時に絡んでいた指先が
優しく触れてくれた唇が
自分の方に引き寄せる時に腰に添えられていた手の感触が
離れたから、余計に忘れられない。
「……椎名?交代だって。」
『っえ?何?このはっ!』
ふいに肩を叩かれて変な声が出る。
「交代。他、見てきていいってよー。」
『あ、ありがと。』
やっぱりだめだ。
木葉に触れられた肩が熱い。
私、変わった。
秋の紅葉の葉っぱみたいに、私の心は木葉秋紀に染められちゃった…みたいだ。
『木葉…』
「ん?椎名、なに?」
嫌だ…
夏乃って名前で呼ばれたい。
やっぱり私…
『ちょっと…いい?』
「いーよ?」
『じゃあ…こっち。』
私は木葉の腕を掴むと人気のない空き教室の方に歩き出した。
ーーーーーー
「で、どした?」
私は偶然空いていた視聴覚室に木葉と一緒に潜り込んだ。
『あの、限定の…』
「あー、あれ?無理につきあわせちゃったみたいでごめんなー?」
そう言いながら木葉はからからと笑う。
『あれ…延長…ってあり?』
「え?」
笑っていたはずの顔。
一瞬で見開かれる瞳、染まる頬。
「うそ…」
いつも余裕そうだった顔は全く余裕がなくなっている。
「嫌なんじゃなかった…のか?」
『ううん。木葉といない方が嫌。』
「変わるのが怖いんじゃ…」
『木葉が一緒にいてくれるんでしょ?』
そう言いながら私は木葉の両手を掴む。
『木葉…秋紀…すき。』
そう言うと、木葉は自分の口元を手で覆った。
「頭撫でたり、手、握っても?」
『うん。』
「チューしても?」
『学校ではあんまり…恥ずかしいから…』
「じゃあ、今は?」
くいっと身体が木葉の方に引き寄せられる。
「していい?」
久しぶりの木葉の熱にくらくらしながら、私は頷いた。
あ、と木葉は何かに気づいたようで、私の名前を木葉は呼んだ。
「新しいピアス、買いに行こーな?
あと…本当は、ずっと前から好き…でした。」
いつから好きだったかとか、どんなピアスがいいかとか、いろいろ聞きたいことはあるけど…
『秋紀…』
「ん?」
私はあなたに…
『早く…キスして…?』
いっぱいいっぱい変えて欲しい。
秋に色付く、木の葉のように。
end