第4章 他人に悪事を行えばそれなりに仕返しされるもの
「殺し屋の相場とか分かんないんだけど、こんなもんでどう?」
おそ松から渡された電卓を見て表示された数字を目で追う。
その数字は確かに一般的な殺害依頼なら充分な額だ。
しかし今回のようにマフィアのボスともなれば話は変わる。
本来なら二倍は欲しいところだったが、何故か報酬が足りないから断ろう、とは思わなかった。
『足りないけど…今回はいいよ』
呆れた笑顔でおそ松に電卓を返すと、彼は少し驚いた顔で「なんで?」と尋ねた。
『一宿一飯の、礼?
あと、六つ子を四人まで見たんだから、どうせなら六人全員揃ったところ見てみたいかなって』
自分でもよく分からず首を傾げながら思いついただけの理由を並べてみた。
それを聞いた四人は顔を見合わせて笑い出した。
「ふっ…信じてたぜカラ松ガール…。
共に闇に閉ざされた兄弟を救おうじゃないか」
「いやだからカラ松ガールではないでしょ。
でもムーメちゃんが手伝ってくれるなら僕も心強いな」
「チョロ松兄さんと一松兄さんも僕たちそっくりなんだよ!
見たらびっくりするかも!」
笑われたことにムッとしていたが、彼らの言葉を聞いてなんだか居心地が悪いような、背中がむずむずするような感覚を覚える。
『…じゃあ改めて挨拶しとこうかな』
それを取り払うように小さく咳払いをして立ち上がり、彼らに向かって丁寧にお辞儀をする。
『殺し屋ムーメ、貴方のご依頼承りました』
お辞儀を終えてゆっくりと顔をあげると、四人は呆気にとられた顔をこちらに向けていた。
そしてその眼はすぐにキラキラとした期待に満ちた眼差しになった。
かっこいいだの、クールだのと言った声が主にカラ松から聞こえる。
確かに彼は殺し屋とか暗殺者とかそういう響きが好きそうだ。
「んじゃ俺も挨拶。
松野ファミリーボス、長男の松野おそ松。
依頼受けてくれてありがとな」
おそ松が立ち上がり一歩進むと右手で握手を求めてきた。
今回は躊躇うことなくその手を握り返す。
「じゃあ次は俺だな。
松野ファミリー幹部、次男の松野カラ松だ。
よろしくなガール」
「はいはいはいははーい!
松野ファミリー幹部で五男の松野十四松でっす!
また今度鬼ごっこしようね!」
「最後は僕かな?
松野ファミリー幹部、末弟の松野トド松だよ。
ムーメちゃんとはお仕事以外でも仲良くなりたいな」
