第4章 他人に悪事を行えばそれなりに仕返しされるもの
『ここからの情報は私と依頼人しか知らないものだから、それを流すってことは殺し屋としての信頼が無くなるわけ。
だから、絶対に後始末をして欲しい』
「後始末?」
『依頼人が死んじゃえば誰が裏切ったとか分からないでしょってこと』
死人に口無し、と口の前で人差し指を立てる。
おそ松はうーんと唸って何か思案しているようだ。
代わりにカラ松が話に入る。
「つまり俺たちは、チョロ松と一松を救出する。
そしておそ松殺害の依頼人、恐らく向こうのボスだろう、そいつを殺せと」
『そう。順番はどちらでもけど。
私が関わっていることがバレなければいいよ』
カラ松がまとめてくれた話にうなづき、彼ら兄弟の決定権を持つであろうおそ松のほうを見る。
少しして、何か思いついたらしいおそ松が顔を上げた。
「じゃあさ、その依頼人殺すのをムーメがやればいいんじゃね?」
『…は?』
突拍子もない発案に私は思わず素っ頓狂な声を出してしまうが、他の三人は何故か嬉しそうだ。
「流石だおそ松。…ナイスアイディーア」
「ムーメちゃんも一緒にやるの!?」
「ま、最初から手伝ってもらうつもりだったもんねー」
四人はわいわいと話し始めた。
おそ松は私が呆気にとられている間に話を進めようとする。
「んで、その情報ってのは?
あんだけ勿体振ったんだから期待しちゃうなー」
両手の平をおそ松達のほうに向けて会話を止めようとする。
『いや待って。
なんで私も参加する流れになってるの?』
「え、なんで?嫌なの?」
『嫌っていうか、こっちの条件は情報出すだけだったと思ったんだけど』
「いーじゃん。乗りかけた船ってことで」
『それは使い方間違ってる…じゃなくて。
忙しいし、手伝う義理はないよ』
忙しいのは嘘ではない。
本当なら今も仕事の準備やら何やらで走り回ってるはずなのだ。
「手伝ってくれたらそれなりに報酬も弾むよー?」
『え、いくら?』
報酬、の言葉に私は間髪いれずに反応する。
その様子におそ松はニヤリと笑い、同じように悪い笑顔のトド松から電卓を受け取る。
おそ松が電卓を叩くと他の兄弟が覗き込み、ふんふん、とか、おー、とかそれぞれ声をあげていた。